「ただいまー」 疲れたーとぼやきながらリビングに入ると、キッチンからひょこっとギイが顔を覗かせた。 「おかえり、託生」 「ただいま・・って何やってんの?」 「何って飯作ってるに決まってるだろ」 どこか得意気な表情のギイは、エプロン姿で、手にはフライ返しを持っている。 一緒に暮らすようになって、食事はどちらか手の空いてる方がするようにしてるので、ギイがご飯を作ることもあるのだけれど、今日は何だかやけに気合入ってない? 「託生、もうすぐできるからなー」 「ああ、うん。ねぇ、どうしてこんな豪華な食事なの?」 テーブルの上にはすでにどどーんと美味しそうな食事が並んでいる。 「だって、今日は1月31日だろ?」 「うん」 「あいさいの日だし」 「・・・・はい?」 何の日ですか? ぼくが黙っていると、ギイは焦れったそうにした。 「愛妻の日。だから今日は託生に美味しいもの食べさせてやろうと思ってさ」 「ああ・・・うん、ありがと」 「着替えてこいよ。飯にしよう」 「・・・うん」 リビングを出て、ぼくはやっぱり首を捻った。 愛妻の日??? だからギイがぼくにご馳走を作ってくれるってこと? ってことは、ぼくはギイの愛妻ってこと??? 「何だそれは」 喜んでいいのか悪いのか。 いや、もうギイのすることには何も言うまい。 時々とんでもないことを平気でやってしまうギイのことも好きだったりするので、とことんまで付き合おうと決めたのだ。 「愛妻の日・・・」 うーん、と何とも複雑な気持ちで、ぼくはギイの作ってくれた豪華な夕食を食べるためにリビングへと向かうのであった。 |