「ギイ、5月6日はゴムの日って知ってたか?」
出会い頭に何を言い出すんだ、とオレは目の前の矢倉を睨んだ。 周りに誰もいないからいいようなものの、普通ならぎょっとするような台詞だ。 「というわけで、これ」 「・・・矢倉」 中を見なくても分かる。 ほらよ、と手渡され紙袋に入っているのはゴムだ。 「この前、もらっただろ?なので、これはそのお返しな。これで貸し借りなしってことで」 ああ、そんなこともあったな、とオレは思いを巡らせる。 「ギイのお奨めだけあって、あれ、なかなか良かったよ」 「そりゃ良かったな」 「それ、俺のお奨めな。今度葉山と試してみて、感想聞かせてくれよ」 「・・・試してみるが、感想は言わない」 「ケチか!」 「嗜みだ」 とりあえずゴムはありがたくいただいておくことにした。 5月6日。 さて、何と言って託生を誘い出して、たった今いただいたばかりのこれを使おうかな、とオレはあれこれと算段を始めるのだった。 |