5月23日 その2



「赤池くん、今日が何の日か知ってる?」
朝の食堂。どこかどんよりとした雰囲気を漂わせ、顔を合わせるなり葉山が言った。
「今日?誰かの誕生日か?」
5月23日?別に何もない普通の金曜日だと思うのだが。
「今日は恋文の日なんだって」
「恋文?ああ、語呂合わせか?なら、5123じゃないと恋文にならないじゃないか」
「だよね、だよね!!!それ、ギイに言ってやってよ」
「何で?」
「分かるだろ?」
僕が尋ねると、葉山は困ったように眉を顰めた。
「今日は恋文の日だから情熱的な恋文をオレにくれよ、とでも言われたのか?」
「・・・鋭いね、赤池くん」
はぁ・・とため息をつくと、葉山はようやく朝食を口にした。
「そんなの嫌だって、ギイに言えばいいだろ?」
「言えないよ」
「どうして?」
「だって」
「あのな、葉山、何でもギイの言う通りにする必要なんてないんだぞ。嫌ならはっきりそう言え」
まったく何だってこいつはギイのことになると、こう素直・・じゃないな、言いなりになるんだ?
恋人なら言いたいこと言える仲だろうに。
「赤池くん、助けてよ」
「どうしろって言うんだよ」
「だから、情熱的な恋文の書き方を・・・」
「はぁ??まっぴらごめんだ!」
何だってギイ宛の恋文を僕が考えなくちゃならないんだ!
本当に本当に、こいつらに付き合ってるとロクなことがない!
どうせこのあとは、ギイから
「どうやったら託生に恋文書かせることができると思う?」
なんて、目一杯の笑顔で言われるに決まってるんだ。
「赤池くんってば」
「しつこいっ!」
だが結局、どうすればギイを諦めさせることができるか、を一緒に考えてやることになる。
自分でもお人よし過ぎると呆れてしまうが、運命と諦めるべきか、抗うべきか。
悩みどころである。





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あとがき

ちゃんと相談に乗ってくれる章三。あんた、いい人だ。