7月16日 



「ギイ、今日が何の日か知ってるか?」
矢倉ががしっとギイの肩に手を回した。
高身長の二人だが、ギイの方がわずかに高い。ちらっと横目で矢倉を見たギイが、眉をひそめる。
「さぁ、何の日だ?」
「駅弁記念日」
「・・・へぇ」
「やったことあるか、ギイ?」
「食べたことあるかの間違いだろ」
「いや、まぁそっちもだけど・・・」
「そっちもってどういうことだ?」
惚けている様子に見えないギイの表情に、矢倉はまさか、と目を見開いた。
「おいおい、ギイ、本当に知らないのか?」
「だから何がだ?」
こんなアンビリバボーなことがあるのだろうか。
あのギイが!本当に駅弁を知らないだなんて?
矢倉はまじまじとギイを見つめ、そういえば一応こいつはアメリカ人だったかと低く唸った。
自分はしたことがないそれを、ギイならきっとやったことがあるだろうから、ちょっとあれこれ教えてもらおうかと目論んでいたというのに。がっかりである。
「マジか。葉山が知ってるとは思えないしなぁ。いや、案外知ってたりすると尊敬するが。ギイ、今晩、葉山に教えてもらえ、な?」
胡散臭そうな目のギイの肩をぽんぽんと叩いて、矢倉はじゃあなと言ってその場を離れた。
しかし、である。
あのギイが本当に知らないなんてことがあるのだろうか、と再び疑問が浮かんだ。
あのギイである。
すっとぼけた演技をしただけなのかもしれない。
「読めないな、ギイ」
まぁ明日の朝、葉山託生の様子を見ればわかるだろう。
駅弁記念日。もし知っていたら、あのギイが何もしないはずがない。
矢倉はうんうんと一人納得したのだった。




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あとがき

駅弁の日だそうな!もちろんエッチな方じゃないですよ!!!(たぶん)