祠堂では洗濯は当然自分たちでやる。 自宅にいた頃は洗濯機の使い方さえ知らなかった者がほとんどだけれど、誰もやってくれないのだから必然的に自分でやることになる。 「しまった、柔軟剤忘れた」 隣でつぶやいた矢倉に、託生は手にしていた柔軟剤を差し出した。 「お、サンキュー」 「矢倉くん、すごい量だね」 「ちょっとサボるとえらいことになるよな」 特に夏場はねぇと何だか主婦のような会話にお互いうなづく。 矢倉は洗濯を始めると同時に、託生の洗濯が終わった。 洗濯機から出来上がったばかりの衣類をかごへと取り出しているのを見るともなく見ていた矢倉が、ぎょっとしたように目を見開いた。 「葉山、それって葉山のパンツ?」 「え?」 手にしていた黒のビキニパンツを、託生は慌ててかごの下へと押し込んだ。 「ち、違うから!あの、あれはぼくのじゃなくて・・・」 「葉山のじゃないってことは、ギイのだな」 仲のいい同室者の洗濯をまとめて一緒にしてしまうのはよくあることだ。 「ギイ、すげぇパンツ履いてるんだな」 「あー、時々びっくりするけど、もう慣れたよ」 「ビキニかー」 「まぁ似合ってるからいいんだけど、初めて見たときは驚いたよ」 「ふうん。見たんだ?」 そりゃ同室だし・・・と小さくつぶやく託生に、矢倉がにやにやと笑う。 同室だからってパンツまで目にすることは少ない 赤い顔をしてそそくさと洗濯室をあとにする託生を見送って、矢倉はビキニねぇと考えこみ、もし自分がそんなパンツを履いてるのを見たら八津はいったいどんな顔をするのだろうかと想像してしまうのだった。 |