昔、託生が桔梗屋から貰ったという浴衣は、客観的に見て、託生にすごく似合っていた。 色合いといい柄といい。 悔しいが、桔梗屋は託生のことをよく見ていたんだなと思う。 もしかしたら少しばかりの恋心も抱いていたのかもしれない。 そう思うとどうしても胸の奥がざわつくが、かといって託生の心が動くはずもないと知っているので落ち着いていられる。かろうじて、ではあるが。 桔梗屋に帯の結び方を教えてもらったという託生は、もたもたとしながらも、最後には綺麗に浴衣を身につけた。 滅多に見ることのない姿に、思わず目が釘付けになる。 あまりにも凝視していたので、居心地悪そうに託生が首を傾げた。 「えっと、ギイ、何かおかしいかな。帯の結び方間違ってる?」 「いや、託生、浴衣似合うなぁと思ってさ」 「そうかな。ギイも似合ってるよ」 にこっと笑って託生が言うと、それがお世辞であっても嬉しいものだなと顔がにやける。 「だけど託生が帯結べるようになってよかったよなぁ」 しみじみと言うと、託生ははて?と小首を傾げた。 「だってほら」 身を屈めて、襟元からのぞく白い首筋にちゅっとキスすると、託生はひゃっとおかしな声を上げた。 「な、何するんだよっ!ギイっ」 「だってお前、浴衣ってすんごい色っぽいし、帯を見たらくるくるしたくなるし、浴衣はだけたら、そりゃそのまま脱がせたくなるし」 「な・・・っ」 託生が言葉を発せないまま顔を赤くする。 「オレは帯は結べないけど、託生が結べるんなら、どこででもいつでも浴衣脱げるもんな」 「脱がないからっ!!!!」 何考えてるんだよっ!と託生が俺の足元に蹴りを入れる。 よし、オレも帯の結び方を覚えよう。 脱がすのも楽しいけれど着せるのも別の楽しみがあるような気がしてきた。 知らず知らずのうちに笑っていたようで、不気味そうに託生に眉を顰められた。 |