9月1日は防災の日。 ということで、祠堂でも防災訓練が行われる。 寮生活では基本的に火は使わないのだけれど、漏電などで火事になることだってあり得るので(何しろ建物が古いのだ)いざという時逃げ遅れたりしないように年に何度か避難訓練も行っている。 とは言うものの、あくまで訓練なので、みんなそれほど真剣に取り組むことはなく、だらだらと寮の外へと集まるという感じだ。 「火事になったら葉山は真っ先に逃げ遅れそうだよな」 「ひどいな、三洲くん。だいだい真っ先に逃げ遅れるって文法的におかしくない?」 文句を言うと、三洲はくすくすと笑った。 「あー、でも火事になったら、真っ先に崎が助けにきそうかな」 「ええ、さすがのギイもそれはないよ」 もしかしたら自分が死ぬかもしれないって時に、ぼくを助けにくるなんて余裕はないだろう。 やっぱり自分の身は自分で守らなくては! となると、訓練にはもっと真剣に取り組まないといけないのかな。 「だけど、真行寺くんも真っ先に三洲くんを助けにきそう」 「あいつを助けることはあっても、あいつに助けられるなんてことはない」 あいつは火事になったらパニックなりそうだからな、と三洲はぶつぶつと言ってるけれど。 ふうん、そうかそうか。 火事になったら、三洲くんが真行寺くんを助けるんだ。 ふうん、そうか。 などと絶対に口にはしない。 言ったらしばらく口をきいてくれないだろうから。 だけど、もし火事になったら、やっぱりぼくもギイを助けにいきたい。 「よし、体力つけよう」 「?」 ぼくのつぶやきに、三洲は不思議そうに首を傾げた。 |