「お、その靴カッコいいな」 昼休みのランチ会。屋上に集まったいつものメンバーで楽しくお弁当を食べていると、矢倉がギイの足元を見て身を乗り出した。 「ニューモデル?初めて見るな」 革靴を履いていることが多いギイだけど、今日はめずらしくスニーカーだ。 矢倉もいつもお洒落な靴を履いているので、足元は気になるらしい。 「ああ、このまえ帰国した時に見つけたんだ。日本未発売」 ニヤリと笑ったギイに、矢倉が悔しそうに舌打ちする。 「ギイ、俺、27センチな」 「・・・だから何だ」 「今度、お土産でよろしく」 「アホか」 特に靴に思いいれのないぼくにしてみれば、履ければ何でもいいんじゃないかと思ってしまうんだけど、そうでもないらしい。 ギイ、お洒落だしなー。いや、でも1000円の靴だって平気で履くしな。 どういう基準で選んでるんだろう。 何となく気になって聞いてみた。 するとギイは少し考えたあと 「・・・フィーリング?」 と首を傾げた。 「何それ」 「見た目も大事だけど、それだけじゃなくて、何ていうか・・ぴたっと合うものがあるんだよなぁ。ああ、探してたのはこれか!って」 「大げさだなぁ」 靴なんて消耗品じゃないか。 するとギイは、ついっとぼくに身を寄せて耳元で囁いた。 「ぴたっと合うのって大事だろ?靴でも恋人でも、さ」 「・・・・・」 「ちゃんと合ってないと痛い思いもすることだし」 靴の話だよね? 何でそんなにやらしい言い方するんだよ! ぼくはそそくさと場所を移動して、章三の隣を陣取った。 さすがのギイもそこまで追いかけてくるようなことはせず、意味深な視線を向けたあと、再び矢倉とスニーカー談義へと戻っていった。 ぴったりと合うスニーカー。 ちょっと探してみようかな。ぴったり合う恋人はいることだし、なんて考えて、一人で赤くなってしまった。 |