「ちょうどいい固さだと思わないか?」 「うん、そうかも」 「ウォーターベッドもいいかなとも思うんだけどな」 「水が入ってるヤツ?破れたりしないのかな」 「まぁ普通に寝てる分には平気だろ。けどなぁ、激しい運動とかしたらどうかなぁ」 「何かぐにゃぐにゃしてて寝にくいのかな」 「おい、スルーかよ」 「そっか、破れちゃまずいから激しい運動はしちゃだめだよね」 「ウォーターベッド却下」 「あー、何か眠くなってくる」 「やっぱり高いベッドはスプリングがいいんだな・・って、おい、本気で寝るなよ」 「気持ちいい」 「そんなにすぐ寝ちまうようなベッドも却下だな」 「義一さん、そろそろ社に戻っていただけますか」 頭上から降ってきた声に、ギイも託生もぱちりと目を開けた。 ギイの昼休みを利用して、検討していたベッドを見に来た。 どうぞ試してくださいといわれて、二人して横になっていたら、あっという間に時間がたってしまったようだ。 「あ、ごめんなさい島岡さん。ギイ、ほらさっさと仕事に戻れよ」 真っ赤になって慌てて託生が起き上がる。ギイははーっと大きく溜息をついた。 「島岡ー、邪魔すんなよ」 「昼休みは終わりました。そろそろ仕事に戻ってください」 「託生、このベッドでいいか?」 こくこくと頷くと、ギイは店員に向かってさっさと注文を済ませてしまった。 一緒に暮らそうということになって、二人で必要なものをそろえていくのは楽しいのだけれど、そういう姿を島岡に見られるのはやっぱり気恥ずかしい。 おまけにベッドだなんて。何だかとっても生々しい。 「託生さん、お邪魔してすみませんでした」 「い、いえ、こちらこそ」 ぺこぺこと頭を下げて、連行されているギイを見送った。 ベッドに腰掛けてやれやれと息をつく。 「別にベッドの日に買わなくてもいいと思うんだけどな」 それでもベッドが入ればとりあえずは一緒に部屋で暮らすことができる。 何もかもを一から一緒にそろえるというのは、なかなか骨の折れることなのである。 |