「まずは北極星。そのまま下に下りていくとカシオペア座。その左がペルセウス座。その下がアンドロメダ座。名前くらいは知ってるだろ？神話とかに出てくるから」
夜空に向かって伸びた指が夜空に光る星をくるりとなぞる。
こっそりと忍び込んだ校舎の屋上に横たわり、綺麗に晴れた夜空を眺める。
ぴたりと肩がくっついているのは、やはり秋の空気が冷たいせいだろう。
「吉沢、今度一緒にプラネタリウム行こうよ。あそこだと季節に関係なく、いろんな星が見えるから」
「うん、そうだね」
「あの星の光がここに届くまでに気が遠くなるくらいの時間がかかってるって思うと、神秘的だよね」
「高林くんはそういう神秘的なところに惹かれて、星が好きになったの？」
「うーん、最初は田舎で見た星が単純に綺麗だったから。で、星の名前を調べていくうちに宇宙のことに興味持つようになって。宇宙ってまだまだ解明されてないことだらけで、そういうの知っていくのが楽しいっていうか・・」
ついつい熱くなっていく口調に気づいて、泉が口を閉ざす。
「どうかした？」
「そっか、だから吉沢のことも好きになったのかな」
「ええ？」
泉の台詞に、吉沢がぎょっとしたように顔を泉へと向ける。
「だってさ、未だに吉沢のことって分からないんだもん。優柔不断かと思えば頑固だし、優しいかと思えば怒ると怖いし。宇宙と一緒で解明されてないことが多すぎて、だからもっと知りたいって思うのかな」
「・・・・あ・・・えっと・・」
「大好きだよ、吉沢」
「それは、宇宙と同じくらい？」
吉沢の問いかけに、泉は呆れたように小さく笑った。
そんなに複雑な性格をしているとは思わないのだけれど、泉に興味を持ってもらえて、だから好きだと言ってくれるのだとしたら、ちょっと嬉しいなどと思ってしまう自分はやっぱり情けない男なのだろうか。
きゅっと握られた手を同じ強さで握り返して、もう一度２人で夜空を見上げた。
澄んだ秋空に星が綺麗に瞬いていた。