9月14日 



小さな箱をとんとテーブルに置いて、ギイは満面の笑みを見せてぼくにキスをした。
「なに、これ」
「プレゼント」
「どうして?」
誕生日でもないし、クリスマスでもないし。何だろう?
「今日はメンズバレンタインデーなんだってさ」
「なに、それ」
「男が好きな人に下着を贈って愛を告白する日」
「・・・・下着?」
するとその箱の中には下着が入っているということか。
今さら下着くらいで動揺はしない。一緒に暮らすようになって、下着だって一緒に洗ってるんだし。いやしかし、ギイのセレクトした下着って何だかとっても怖い。
センスは抜群にいいはずなのに、時々とんでもない柄の下着を買ってきてぎょっとするのだ。
「開けていい?」
「もちろん」
恐る恐る、箱にかかったリボンを取る。蓋をあけると、中には小さく畳まれた下着が入っていた。
黒の下着。
うん、普通だ。ちょっと面積が小さいような気もするけど、でもまぁこれなら身につけることができる・・・ん?
中にまだ一枚下着が入っている。
手に取ると、それは想像もしなかったもので、思わずぎゃっと放り出してしまった。
「な、何だよっ、それ!」
「男用のブラジャーだってさ。こんなのつけてどうするんだろうな」
「は?そう思うなら買ってくるなよ、そんなもの」
「いや、面白かったから。パンツとお揃いだったし」
「・・・・」
ぼくは無言で男性用ブラジャーをギイに押し付けた。面白いというのなら、自分がつければいいんだ。
ギイは服の上からブラジャーを押しあててニヤニヤと笑った。
「なぁ、いざって時に、これつけてたらびっくりするよな」
その光景を想像したら確かに笑える。
思わず吹き出すと、ギイはしてやったりといった感じでブラジャー片手にぼくにキスをした。
「なぁ、1回これ・・・」
「つけません!」
ぴしゃりと言うと、ギイはつまらなさそうに小さく唸った。



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あとがき

メンズバレンタインデーの日だそうな!ブラジャーつけている男子なんているのだろうか。