小さな箱をとんとテーブルに置いて、ギイは満面の笑みを見せてぼくにキスをした。 「なに、これ」 「プレゼント」 「どうして?」 誕生日でもないし、クリスマスでもないし。何だろう? 「今日はメンズバレンタインデーなんだってさ」 「なに、それ」 「男が好きな人に下着を贈って愛を告白する日」 「・・・・下着?」 するとその箱の中には下着が入っているということか。 今さら下着くらいで動揺はしない。一緒に暮らすようになって、下着だって一緒に洗ってるんだし。いやしかし、ギイのセレクトした下着って何だかとっても怖い。 センスは抜群にいいはずなのに、時々とんでもない柄の下着を買ってきてぎょっとするのだ。 「開けていい?」 「もちろん」 恐る恐る、箱にかかったリボンを取る。蓋をあけると、中には小さく畳まれた下着が入っていた。 黒の下着。 うん、普通だ。ちょっと面積が小さいような気もするけど、でもまぁこれなら身につけることができる・・・ん? 中にまだ一枚下着が入っている。 手に取ると、それは想像もしなかったもので、思わずぎゃっと放り出してしまった。 「な、何だよっ、それ!」 「男用のブラジャーだってさ。こんなのつけてどうするんだろうな」 「は?そう思うなら買ってくるなよ、そんなもの」 「いや、面白かったから。パンツとお揃いだったし」 「・・・・」 ぼくは無言で男性用ブラジャーをギイに押し付けた。面白いというのなら、自分がつければいいんだ。 ギイは服の上からブラジャーを押しあててニヤニヤと笑った。 「なぁ、いざって時に、これつけてたらびっくりするよな」 その光景を想像したら確かに笑える。 思わず吹き出すと、ギイはしてやったりといった感じでブラジャー片手にぼくにキスをした。 「なぁ、1回これ・・・」 「つけません!」 ぴしゃりと言うと、ギイはつまらなさそうに小さく唸った。 |