キュートって絶対に男に使う言葉じゃないと思うのだ。 小さい子供とか可愛い女の子とか、そういうもの相手に使うべき言葉であって間違っても男子高校生相手に使う言葉じゃない。 「そうだよね。ぼくもそう思うよ」 うんうん、とうなづいたのは葉山くんだ。 昨夜、矢倉に「八津ってキュートだよな」なんてからかい混じりに言われ、それが原因で喧嘩した。 何だよ、キュートって。女の子扱いするなっ、て今でも思い出すと腹が立つ。 怒りがおさまらないまま、たまたま食堂で見つけた葉山くんを捕まえて、思わず愚痴ってしまったのだ。 俺の話を黙って聞いていた葉山くんは、聞き終えると大きくうなづいてくれた。 「キュートもそうだけど、可愛いとかさ、あれも男相手に使う言葉じゃないよね」 「まったくだよ。って、葉山くん、それギイに言われてるの?」 「うん。何かよく分からないんだけど、いきなり言うんだよね。あれってもしかして嫌がらせなのかな」 「嫌がらせじゃないとは思うけど・・・」 そうかなぁと葉山くんはブリックパックのコーヒー牛乳に差したストローをちゅーと吸い上げた。 俯き加減で唇を尖らせる様子は、何となく小さい子供を思わせる。 けれど、葉山くんは容姿的には決して女の子っぽいわけではないし、それなりに身長もあって、どこからどう見ても普通の男子高校生だ。 可愛いという感じではないのだけれど、葉山くんを溺愛しているギイにしてみれば、こんなちょっとした仕草でもくるものがあるのだろう。 見た目じゃなくて、きっと仕草とか言動とか・・・ 「・・・確かに可愛いって言いたくなるか」 「え?」 「ううん、何でもない」 葉山くんは確かにちょっと可愛いところがある。 かといって、矢倉が俺のことをキュートだと言うのとは話が違う! 絶対に許すもんか、ともう一度固く心に誓った。 |