「何もない」 冷蔵庫を覗いたギイが、がっくりと肩を落とした。 珍しくギイが長期バカンスを取れたので、二人で旅行をして、たった今帰ってきたばかりだ。 微妙な時間になってしまったせいか、胃袋がブラックホールのギイは「腹減った」などと言い出した。 確かに少し小腹が空いた気はするけど、もう寝る時間だし。おまけに冷蔵庫は空っぽである。 「何だかなー、今から外食ってのも面倒だし、何かないのかー」 何もないって分かっているのに、ギイはごそごそとキッチンの扉を開けまくる。まったく往生際が悪いな! 「何もないよ。出かける前に綺麗に片付けていっただろ?」 「くそー、ないと思うと余計に腹が減る」 「もう寝たら?」 「ピザ取るかー」 「聞いてないね。ぼくはもう寝るよ、おやすみ、ギイ」 「こらこら、オレ一人で夜中にピザはないだろ、付き合えよ」 「やだよ。こんな中途半端な時間にピザなんて」 などとやり取りをしている間にも、ギイはさっさと宅配ピザを頼んでしまった。 もー、少しくらいお腹空いたまま寝たってどうってことないのに! 眠気と空腹の戦い。 これもみんな冷蔵庫が空っぽなせいと、ギイが空腹なせいだ。 今度はギイのために何か備蓄しておこう。 ソファでうつらうつらしながら、ギイに付き合ってピザの到着を待つのだった。 |