11月11日 



「託生、今日が何の日か知ってるか?」
うきうきとギイが聞いてくる。ぼくはまたか!と思いつつも、
「知ってるよ」
と答えた。
「そうか。よし、じゃあ買いに行くか!」
「え、買いに行くって、どこに?」
「どこにって売店しかないだろ?売ってたはずだし」
えーっと、売ってた・・よな。うん。ぼくは渋々立ち上がった。
それにしても、あんなもの買って何がしたいんだろうね、ギイは。
2人して売店にやってくると、ギイは意気揚々とお菓子が並んでいる
コーナーへと向かう。
「え?ギイ、何を買うの?」
「何ってお前、今日はあれの日だろ?」
「だよね。じゃあこっちだよ」
ぼくは日用雑貨のこコーナーを指差す。
「・・・・・?」
「・・・・・?」
2人して顔を見合わせて、何だか互いに誤解があることに気づいた。
「託生、今日は何の日だって?」
「今日は乾電池の日だよ」
「はぁ?ポッキーの日だろ!」
「なに、ポッキーの日って?」
「11月11日。ポッキーだろうが」
「違うよ、十一月十一日。プラスマイナスで乾電池の日だよ」
何じゃそりゃ!とギイがあり得ないと頭を抱える。
「ポッキーの日だなんて、どう考えてもお菓子メーカーの策略じゃないか」
「策略でけっこう。これでポッキーゲームがしたい」
「しません」
「じゃ乾電池で何するんだよ」
「何もしないよ」
つまらんつまらんと部屋に帰るまで、ギイは30回は叫んでいたように思う。
しょうがないので、部屋に入ると、ギイに強請られるままにポッキーゲームをすることになってしまった。
「ポッキーゲームってさー」
「うん?」
「キスしたくないのにやるから面白いんじゃないのかなぁ???」
例えばギイと章三とかさ。うん、それはちょっと見てみたいかも。
「うーるーさーいー」
ポッキーを銜えたギイが、ほらほらとぼくを促す。
11月11日。
乾電池の日でいいのに、と思うのはぼくだけだろうか。


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あとがき

別にポッキーの日じゃなくてもしてるだろうに!