ラウンド14 「楽しかった」 広いベッドにばふん、と託生がダイブする。 ゴルフ場で風呂も入ったし、帰りには奈美子ちゃんリクエストのお好み焼きをたらふく食べたし、あとはもう寝るだけだ。 オレも同じように託生の横に寝転んだ。 心地よい疲労感が全身にあって、目を閉じればすぐにでも眠れそうな気がする。 普通にゴルフするくらいじゃこんな風に疲れないのだから、これはきっと初ラウンドだった奈美子ちゃんの興奮ぶりに当てられたに違いない。 ずりずりと身体をずらして託生を片手で引き寄せる。 特に嫌がりもしないのは、託生も疲れているからだろう。 「奈美子ちゃん、きっとすぐに上手になるね。だってパターはギイより上手だったし」 「あれなー、ほんと油断した」 「油断?ただの練習不足だよ。ギイ、ぜんぜん練習してないから」 「そんな暇があるなら託生といちゃいちゃしてたい」 「あー、ぼくももうちょっと練習しよっと。奈美子ちゃんに追い抜かされたくないから」 「頑張れ。陰ながら応援する」 「何だよ、付き合ってくれないの?」 「お前、やるとなったらしつこいからなー」 「しつこいとは失礼な。やるとなったらとことんやるって言って欲しいな」 「そうだよなぁ。バイオリンもそうだし・・って、お前、怪我しちゃまずいから適当なところでやめとけよ」 託生はけっこうな負けず嫌いな一面があるのだ。 頑固で負けず嫌い。でなきゃ一流のバイオリニストになんてなれないだろう。 「練習、奈美子ちゃんでも誘ってやれよ。たぶん今が一番楽しい時期だろうから、喜ぶぜ」 そしてたぶん章三も助かるはずだ。 と思ったが、それは口にはしない。 すでに半分夢の中へと旅立っている託生は、そうする、と小さくつぶやいて、そしてすぐに安らかな寝息が聞こえてきた。 「オレも寝るか」 奈美子ちゃんと二人きりで練習するくらいではヤキモチは焼かない。 ・・・たぶん。 とりあえず今夜はもう寝よう。くたくたになってる託生を何とか布団の中へと押し込む。 ぴったりとくっついて目を閉じると、すぐに睡魔は襲ってきた。 託生と奈美子ちゃんが練習に励めば、きっとすぐにまたラウンドに行こうと言い出すに違いない。 奈美子ちゃんも楽しめて、託生がちょっと悔しがるくらいには難しくて。 さて、どこのゴルフ場を予約するかな、と薄れていく意識の中であれこれと考えるのだった。 |