元日の朝、約束の時間に奈美の家のチャイムを押した。 しばらく後に姿を見せた奈美は綺麗な振袖を着ていて、僕は一瞬言葉を失った。 「あけましておめでとう、章三くん」 「ああ、おめでとう、奈美」 「何よ、変な顔して」 「いや、着物姿なんて珍しいからさ」 「ふふ、どう、似合ってる?」 両手を広げる奈美に、僕は似合ってるよ、と素直に感想を述べた。 すると奈美がぱっと顔を赤らめた。 「何赤くなってんだよ」 赤くなられると、こっちが照れるじゃないか。 「だって、章三くんが褒めたりするから」 「感想聞いたのは奈美の方だろ」 「そうだけど」 「ほら、行くぞ」 元日に初詣に行く。それは幼い頃からの恒例の行事なのだけれど、今年の初詣はそれまでとは少し違うように感じる。 珍しく奈美が着物なんて着ているからだろうか。 それとも2人の仲が幼馴染から恋人に変わったからだろうか。 手を繋ぐと、奈美は恥ずかしそうに少し笑った。 着物のせいか、奈美の歩みはいつもよりもずっとゆっくりで、だけどそういうのも悪くないなと思った。 |