お正月(2014年) 1



元日の朝、約束の時間に奈美の家のチャイムを押した。
しばらく後に姿を見せた奈美は綺麗な振袖を着ていて、僕は一瞬言葉を失った。
「あけましておめでとう、章三くん」
「ああ、おめでとう、奈美」
「何よ、変な顔して」
「いや、着物姿なんて珍しいからさ」
「ふふ、どう、似合ってる?」
両手を広げる奈美に、僕は似合ってるよ、と素直に感想を述べた。
すると奈美がぱっと顔を赤らめた。
「何赤くなってんだよ」
赤くなられると、こっちが照れるじゃないか。
「だって、章三くんが褒めたりするから」
「感想聞いたのは奈美の方だろ」
「そうだけど」
「ほら、行くぞ」
元日に初詣に行く。それは幼い頃からの恒例の行事なのだけれど、今年の初詣はそれまでとは少し違うように感じる。
珍しく奈美が着物なんて着ているからだろうか。
それとも2人の仲が幼馴染から恋人に変わったからだろうか。
手を繋ぐと、奈美は恥ずかしそうに少し笑った。
着物のせいか、奈美の歩みはいつもよりもずっとゆっくりで、だけどそういうのも悪くないなと思った。



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あとがき

卒業してすぐくらいに付き合い始めて初めてのお正月、みたいな感じ?