待ち合わせ場所にやってきた託生は、そりゃもう完全防備で、思わず吹き出してしまった。 「お前、どうなってんだよ、それ」 「寒いよー」 ダウンのコートを着て、首にぐるぐると巻かれたマフラーで鼻先まで隠れている。 手袋はもちろん、カイロまで持っている。 「それほどの寒さか?大げさなヤツだなぁ」 「ギイは絶対に体感感覚がおかしいんだよ、やっぱり行きたくない。コタツでぬくぬくしてたい」 吐く息が白い。年が変わるまであと30分。 そりゃまぁ一番寒い時刻だとは思うけどな、今さら行きたくないなんて言うなよな。 オレと一緒にいるよりもコタツの方が好きなのかと、うっかり愛情疑ってしまうじゃないか。 「初詣に行きたいって言ったのは託生だろうが」 「言ったけど、まさかこんなに寒いなんて」 「はいはい。じゃ神社で温かい甘酒でも飲もう」 「未成年」 「甘酒くらいいいだろ」 「おでんの方がいい」 「お、それもいいな」 誰もいない深夜の住宅街だから、そっと手を繋いでみる。 託生はちらっとオレを見て、うっすらと目元を赤らめた。 我慢できずに身を屈めて小さくキスをしようとしたが、マフラーに邪魔された。 「・・・寒がり反対」 思わずつぶやくと、託生は楽しそうに笑った。 |