「託生、何をお願いしたんだ?」 人混みではぐれないように、とオレは託生の腕を取った。 初詣に訪れた神社はすごい人で、いつもならこんな風にくっついて歩くのは恥ずかしいからと嫌がりそうなものだが、そうでもしなければ一緒に歩くこともすらできないのだ。 託生も文句は言わない。 「願いごと?」 「そう願いごと」 「えーっと、今年もいい年になりますように、かな」 「何だよ、それ。もっとあるだろ」 オレが言うと、託生はきょとんをオレを見返す。 「もっと、ってなに?」 「だからさ、オレとのこととか」 「ギイとのことって?」 「ずっと一緒にいられますようにとかさ」 「あー」 「あーってお前なぁ」 何て緊張感のない。託生らしいと言えばそうなのだが。 「だってギイ、そういうこと神様にお願いするのってどうなのかなと思ってさ」 「そういうことだからこそお願いしろよ」 この先、オレたちだけの力じゃどうにもならないことが起こるであろうことは目に見えていて、無心論者のオレでさえ、神様に縋りたくなるくらいだというのに。 「よし、戻ってもう一度お参りしよう」 「えー、冗談だろ!?」 この人混みを?と託生が呆れた顔を見せる。 「お前、オレと一緒にいたいだろ?」 「何だよ、その脅し文句」 げっそりとする託生の手を引き、もう一度境内へと向かう。 ちゃんと神様にお願いしなくては。 こうしてずっと手を握っていられるようにと。 |