お正月(2014年) 4



びっくりするほどの人混みだったが、幸いなことにはぐれることはなかった。
というのも、年下の恋人が周りより頭一つ背が高いせいだ。
こいつはいったいどこまで伸びる気だ、と理不尽な怒りが湧いてくる。
ようやくたどり着いた神様の前で、ヤツは神妙な顔つきで手を合わせた。
俺は別段神様にお願いするようなことはなかったが、とりあえず賽銭を入れて、手を合わせた。

(・・・・・受験が上手くいきますように・・ていうのが妥当なところなのか?いや、家内安全とか・・・。いや・・・)

目を開けてすぐ隣で熱心にお参りをする真行寺を見る。
そして、本当に願いたいことはたった一つだったと思いなおす。

「アラタさん、何願いました?」
「家内安全」
「何っすか、それは!俺とずっと仲良くできますようにって祈ってくださいよ!」
「何でそんなこと」
「ひどい」
「じゃあお前は何を願ったんだ?」
「アラタさんの受験が上手くいきますように、って」
「・・・・・」
「あれ?だめでした?」
「・・・べつに」

(お前だってそういうこと願ってるんじゃないか)

思わず言いそうになって、口を閉ざす。そんなこと死んでも言いたくない。
「ここは勉強の神様だっていうから、たぶん効き目ありますよ」
「はいはい」
「アラタさん、ずっと仲良くできますようにっていうのは、やっぱり恋愛の神様にお願いしないとだめっすよね〜、明日一緒に行きませんか?」
「行かない」
「行きましょうよ〜」
駄々っ子みたいに言い募る真行寺に足を止める。心もち上向いて、ヤツを見据える。
「もうさっき祈ったからいい」
「はい?」
「勉強の神様でも、少しくらいは聞いてくれるだろ」
つまらんことで受験勉強の邪魔をするな、と言い捨てて歩き出す。
真行寺の嬉しそうな顔を見るのは気恥ずかしくて、歩く速度を速めた。



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あとがき

何だかんだ言いながらも仲良しか。