NYへ来て始めての新年。 カウントダウンが有名らしいけれど、もちろんVIPのギイがそういうところへ行けるはずもなく。 ぼくだって一人で行きたいわけじゃないので、大晦日の夜は部屋で2人きりでカウントダウンをすることになった。 「どこかのパーティにでも行けば良かったかな」 ソファに座ったギイがワイン片手につぶやく。 ぼくはその言葉に胸が痛んだ。やっぱり2人きりのカウントダウンよりも、賑やかなパーティの方が良かったんだろうか。ギイの友達ってみんな陽気で楽しい人たちばかりだし、本当はそっちに行きたかったのかな。 「せっかく初めてのNYでのカウントダウンだもんなぁ、どんなものなのか経験したかっただろ?託生」 「え、ぼく?」 思わず聞き返してしまった。そんなぼくにギイが苦笑する。 「何だよ、オレが行きたがってるとでも思った?」 「うん」 「オレは託生と2人きりの方がいいよ。こっち来て、託生」 ギイの隣に座ると、違うというようにギイは自分の膝を叩く。 「なに?」 「ここに座って、託生」 え、それって膝の上に座れってこと?何て恥ずかしいことを言い出すんだ、この男は! 「ほら早く。新年になっちまうだろ」 「・・・今夜は特別だからな」 促されるまま、ぼくはギイの膝を跨いで、向かい合わせに座った。 ギイがぼくの腰に手を回してさらに引き寄せる。 「ちょっと・・ギイってば」 恥ずかしいだろ!と、逃げようとしても強い力で引き戻される。 「託生、ほら、あと1分」 「ああ、うん。えっと、今年もお世話になりました」 「こちらこそ」 「来年も・・迷惑かけること多いとは思うけど、よろしくね、ギイ」 「オレの方こそ、一緒にいてくれてありがとな。来年もよろしく」 いくつになっても思わず見惚れてしまうギイの笑顔に胸が高鳴る。 ぼくはそっとギイの頬を両手で包み込むと、ゆっくりと顔を寄せた。 啄ばむようにキスを繰り返していると、ぱっと背後が明るくなった。 振り返ると夜空に上がる無数の花火。 「綺麗・・・」 「あけましておめでとう」 ハッピーニューイヤーと言わないあたりがギイらしい。 誘われるように、もう一度口付けを交わす。 NYへ来て始めての新年。 2人で迎える新しい年。 |