お正月(2014年) 6



NYへ来て始めての新年。
カウントダウンが有名らしいけれど、もちろんVIPのギイがそういうところへ行けるはずもなく。
ぼくだって一人で行きたいわけじゃないので、大晦日の夜は部屋で2人きりでカウントダウンをすることになった。
「どこかのパーティにでも行けば良かったかな」
ソファに座ったギイがワイン片手につぶやく。
ぼくはその言葉に胸が痛んだ。やっぱり2人きりのカウントダウンよりも、賑やかなパーティの方が良かったんだろうか。ギイの友達ってみんな陽気で楽しい人たちばかりだし、本当はそっちに行きたかったのかな。
「せっかく初めてのNYでのカウントダウンだもんなぁ、どんなものなのか経験したかっただろ?託生」
「え、ぼく?」
思わず聞き返してしまった。そんなぼくにギイが苦笑する。
「何だよ、オレが行きたがってるとでも思った?」
「うん」
「オレは託生と2人きりの方がいいよ。こっち来て、託生」
ギイの隣に座ると、違うというようにギイは自分の膝を叩く。
「なに?」
「ここに座って、託生」
え、それって膝の上に座れってこと?何て恥ずかしいことを言い出すんだ、この男は!
「ほら早く。新年になっちまうだろ」
「・・・今夜は特別だからな」
促されるまま、ぼくはギイの膝を跨いで、向かい合わせに座った。
ギイがぼくの腰に手を回してさらに引き寄せる。
「ちょっと・・ギイってば」
恥ずかしいだろ!と、逃げようとしても強い力で引き戻される。
「託生、ほら、あと1分」
「ああ、うん。えっと、今年もお世話になりました」
「こちらこそ」
「来年も・・迷惑かけること多いとは思うけど、よろしくね、ギイ」
「オレの方こそ、一緒にいてくれてありがとな。来年もよろしく」
いくつになっても思わず見惚れてしまうギイの笑顔に胸が高鳴る。
ぼくはそっとギイの頬を両手で包み込むと、ゆっくりと顔を寄せた。
啄ばむようにキスを繰り返していると、ぱっと背後が明るくなった。
振り返ると夜空に上がる無数の花火。
「綺麗・・・」
「あけましておめでとう」
ハッピーニューイヤーと言わないあたりがギイらしい。
誘われるように、もう一度口付けを交わす。
NYへ来て始めての新年。
2人で迎える新しい年。



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あとがき

二人はNYで幸せに〜と妄想してましたよ、あの頃は(笑)