はっさく



食後のデザートはハッサクだった。
なかなか手をつけないでいるぼくに、ギイが嫌いだったか?と聞いていた。
「いや、別に嫌いじゃないよ」
「今日のはすっげぇ甘いぞ」
「うん」
「食べろよ」
「うーん」
躊躇うぼくに、ギイは首を傾げた。
「何で食べないんだよ」
「えっと、ハッサクの皮ってさ、けっこう堅いだろ?」
「まぁみかんよりはな」
「あれ、剥くのけっこう大変なんだよね」
「・・・・そうか?」
「食べたいなーって思うんだけど、剥くのがなー」
「・・・託生」
「うん?」
「剥いて欲しいってことだな?」
「うん」
ギイははーっとため息をつくと、ぼくのトレイからハッサクを取り上げ、あっという間に剥いてくれた。
「すごいね、ギイ」
「これくらいでお褒めいただき光栄です」
ほらよ、と剥いたハッサクのひと房をぼくの口元へ運ぶ。
ぱくりと食べるとその美味しさに頬が緩んだ。
「託生、幸せそうだなぁ」
「ギイのおかげでね」
「分かってるならよろしい」
そう言うギイも何だか幸せそうな顔をしていた。


BACK

あとがき

天然の甘え上手!!