いくら仲の良い恋人同士であっても、秘密の一つや二つはあるはずだ。 「まぁあれだよな、ギイは秘密だらけっぽいよな。葉山はそういうの平気なのか?」 「秘密・・・?」 「隠し事とか、そういうの」 俺が尋ねると、隣を歩いていた葉山は困ったように視線を巡らせた。 祠堂一の御曹司を恋人に持つこの葉山託生は、ほとんど盲目的にギイのことを信頼している。 ギイが葉山を騙すことなんて朝飯前なんだろうなぁ。 「知りたくないか?ギイの秘密」 「え、いや、あんまり知りたくない・・・かな」 「どうして?」 ギイの秘密だなんて、俺だって興味津々なのだから、恋人ならなおさらだろうに。 「どうして、って・・・知らないでいいことだから、ギイは言わないんだと思うし、知っちゃうと・・・いろいろ、考えてしまいそうだし」 「・・・なるほどね。じゃ葉山は?ギイに隠し事の一つでもしてるのか?」 俺が言うと、葉山はきょとんと目を見開いた。 「ぼくはギイに隠し事なんてしてないよ?」 「それ、不公平じゃないか?」 「そうかな。だけど矢倉くん、何でも打ち明けられるのも大変だって思うよ。知らなければ良かったって思うこともあるだろ?ぼくなら他人の秘密を打ち明けられたら、気になっちゃって眠れなくなりそうだよ」 俺はあーあ、と肩を落とした。 これだからギイは葉山を手離せないんだよな。 そりゃこんな可愛いこと言われちゃ、メロメロにもなろうってもんだ。 1年のチェック組なんて、ギイの秘密が知りたくてうずうずしてるってのにお気の毒様ってとこだな。 ギイは何も知ろうとしない恋人にぞっこんだ。 「矢倉くんは?八津くんに秘密があるんだとしたら、やっぱり知りたいって思うのかい?」 葉山からの反撃に、俺は一瞬怯んだ。まさかこういう切り返しをしてこようとは。 「俺もそうだな、何でも知っていたい方かな」 「そっか。強いんだね、矢倉くんも」 屈託なく笑う葉山に、俺は内心「降参」と白旗を揚げた。 こういう葉山の相手をできるギイはやっぱり只者ではない、とどこまでものほほんとした葉山を見て笑いが漏れた。 |