秘め事



ふいに口づけても、託生は逃げなくなった。
抱きしめると困った顔ではなく、くすぐったそうに笑う。
ベッドに誘うと嫌がることなく、その身を預けてくれる。
崎義一が恋人だと、どうやら託生の中で認識されたみたいで、嬉しくなる。


その夜、ひとしきり抱き合ったあと、腕の中で息を乱している託生の耳元に唇を寄せた。
「あのさ託生」
「・・・なに?」
「託生はどういうのが好き?」
「どういうのって?」
「だからどういうセックスが好き?」
「・・・・・・っ!」
夜目にもはっきりと分かるほどに、託生は瞬時に赤くなった。
「な、何だよ、それっ・・・」
「何って、どういうのが好きなのかなぁって普通の疑問だけど?」
オレは汗ばんだ託生の額にかかる前髪を指先で払った。
「最近ちょっとは気持ちよくなってくれてるみたいだけど、どうせなら託生がうんと気持ちよくなるやり方でやりたいだろ?」
「・・・・・」
「託生がどこ触られたら感じるのかだんだんわかってきたけど、ああいうのって思いもしないところが良かったりするしさ、託生はどこがイイのかなぁって。たまには上になりたいとか、そういうリクエストがあったら聞いておきたいし・・・」
「ギイ・・・・」
「うん?」
託生は今にも泣きそうな顔で、オレを睨みつける。
「あのさ、そういうの相手に聞くのって恥ずかしくないの?」
「どうして?セックスって2人でするものだろ?自分だけがキモチいいなんておかしいし・・・」
「・・・・普通でいい」
託生は耳まで赤くして、枕に顔を埋めると、聞こえないような小さな声で言った。
普通?普通って何だ?
なおも聞こうとするオレの口を、託生が片手で塞いだ。
「ん・・・っ?」
「ギイ、分かった。いいからもう聞かないで」
「・・・・っ」
託生はそっと手を離すと、困ったように視線を巡らせ、そしておもむろにオレの唇にキスをした。
「ぼくがどういうのが好きか、ギイが教えてよ」
「・・・」
「自分じゃ分からないから、ギイが教えて」

託生は時々そんな殺し文句を言って、オレを煽る。



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あとがき

どうせならいろいろ注文つけちゃえ。