ギイは日本での免許を手に入れると、デートの時には自分で運転するようになった。 足ができると行動範囲は断然広がり、ぼくたちは休みになると2人でいろんなところへ遊びに行った。 「御曹子に運転させるなんて、葉山もなかなかやるな」 久しぶりに章三と奈美子ちゃんを誘って4人で食事をしている時のことだった。 「ぼくだって免許持ってるのに、なかなか運転させてくれないんだよね」 「そりゃ葉山の運転じゃ、おちおち助手席で眠ってられないだろうからな」 章三がニヤニヤと笑う。 そりゃまぁ乗り慣れてないのは事実だけど、免許は一発で取ったんだぞ! 「崎さんて、ブレーキランプ5回点滅してくれそう」 奈美子ちゃんの言葉に、ギイがもちろんやってるぞ、と得意気にうなづいた。 それを聞いた隣の章三は、げっと嫌そうな顔をした。 「恥ずかしいことをするなっ!馬鹿者」 「何言ってんだ、章三。あれは定番だろうが」 「そうよねぇ、でも本当にやってくれる人なんてなかなかいないのよねぇ」 奈美子ちゃんがちょっと拗ねたように章三を見やり、そしていいなぁ葉山さん、とぼくに言った。 しかし。 「あのさ、あれって何かのサインなの?」 「はぁ!?」 「何だとっ?」 「えっ?」 ぼくの言葉に3人が一斉に信じられないというような表情を見せた。 「いっつもギイが曲がり角でブレーキランプ5回点滅させるからさ、ずいぶんと慎重だなぁなんて思ってたんだけど・・・」 「・・・・託生・・」 がっくりとギイがその場に平伏した。 奈美子ちゃんは気の毒そうにギイを見て、章三はげらげらと笑い出す。 「あーあ、さすが葉山。報われないよなぁギイ」 「うるさい」 「葉山さんて、ほんと無敵って感じ・・・」 その後、奈美子ちゃんが貸してくれたCDを聞いて、ぼくはその意味を知った。 何だか知らないところで、ギイはいろいろとこういうことしてくれてそうだなぁとちょっと感動したのだけれど、章三には、 「嫌がれ!素直に喜ぶな!」 とさんざん怒られた。 |