机の上にあるはずのあるものがないことに気づいて首を傾げた。 ふと傍らのゴミ箱を覗き込み、ぼくは思わず声を上げた。 「どうした?」 ベッドに横になっていたギイがその声に顔を上げる。 「ギイっ!もしかして食べちゃったの?」 「何を?」 「こっこ!!」 「え?」 「だから、こっこだよ。机の上に置いてあっただろ?」 ギイは、ああ、とうなづいて起き上がった。 「美味かったよ、さすが静岡名物」 「じゃなくて!!!」 先日の帰省帰りに、お土産として買って帰ってきた「こっこ」。 静岡では有名なお菓子だ。 利久や章三や、もちろんギイにも配った。 それでも余った「こっこ」を、あとで食べようと思って、ぼくは机の上に置いておいたのだ。 「どうして食べちゃったんだよ!ギイ!」 「だって、あれお土産だろ?そう言ったよな?託生」 「そうだけど」 確かにそう言った。 これはお土産だよ、って言った! だけど、「こっこ」はぼくの大好物で、余ったやつは自分で食べようと思ってたのだ! 3個残っていたはずなのに、全部食べちゃうなんて!!! 「で、葉山は3日も口をきいてくれないわけか」 笑いを堪えた章三が、遠くの席に座る託生に視線を向ける。 「食べ物の恨みって怖いよなぁ」 困ったなぁとギイがつぶやく。 「どうするんだよ?」 「どうしたものかねぇ」 山奥祠堂じゃどうしたって手に入らない「こっこ」 さぁ、どうしよう。 |