「え、赤池ってオンナいるの?」 矢倉が心底驚いたというように目を見開く。 ギイのゼロ番。 何かはずみでギイの口から奈美の名前が出ると、とたんに矢倉が目を輝かせた。 口を滑らせたギイを睨むと、ヤツは悪びれもせず軽く肩をすくめるだけだった。 「赤池にオンナがいたとはなぁ」 「オンナっていうな」 「男かよ?」 「違うっ!!!お前らと一緒にするな!」 僕が叫ぶと、矢倉はふーんと腕を組んでうなづいた。 「・・・何だよ」 「いや、赤池の彼女ってどんなタイプなのかなーって」 「可愛いけど、かなりのしっかり者で、浮気なんかしたらすぐに見抜かれてしまいそうな感じ。料理も上手だし、明るいし、嫁さんになったら近所付き合いとかちゃんとしそうな・・・って、いてっ、殴るなよ、章三」 「何でお前が奈美の説明をするんだよっ」 間違ってるだろ、っていうか、勝手に奈美のことを矢倉に話すな! 「ギイがそこまで絶賛するなんて珍しいな」 「けど、オレは託生がいいけどな」 しらっと惚気るギイに、僕は唖然とし、矢倉はけっと吐き捨てた。 もう、ただの友達設定なんてあってないようなものじゃないか。 奈美をダシに結局最後は惚気る相棒に、どうにも納得いかずに僕は深くため息をついた。 |