かりかりと静かな教室にペンを走らせる音だけが聞こえる。 中間テストの真っ只中の教室、窓際の席で真行寺は数学の問題に取り組んでいた。 (あれ、この問題知ってるぞ) 3問目にとりかかった時、その問題を読んで真行寺は首を傾げた。 応用問題なので、丸々授業でやったとは思えない。というか、授業ではやってないはず。 (あ、この前アラタさんに教えてもらった時の問題だ) 押しかけた生徒会室で2人きりだった時に、暇なら予習しろと言われて少し勉強を見てもらったのだ。 その時、これを解いてみろと言われて出された問題と同じだった。 偶然とはいえ、これはラッキーだ。 もちろん二度目なので簡単に解ける。答えにも自信がある。 (今度会ったらお礼言わなくちゃ) 次に会った時、真行寺は三洲にテストの出来がばっちりだったと報告した。 「アラタさんが出してくれた問題と同じのが出たんですよ、すっげぇ偶然でしょ?」 「偶然なわけあるか」 「へ?」 三洲はつまらなさそうに肩をすくめた。 「あの先生、毎年同じ問題出すんだよ。俺も先輩から教えてもらったから、還元しただけだ」 「知らなかった」 「有名な話だったけどな、俺たち生徒会役員の間では」 生徒会役員の先輩っていうと、もしかして相楽先輩だったりするのだろうか。 「来年はお前も誰かに還元してやれ」 何かちょっと複雑な心境になってしまった真行寺の気持ちを知ってか知らずか、三洲はくすりと笑った。 |