疑惑



(こいつ、妙にキスが上手くなってないか?)

そんなことを最中に思ってしまえる程度に、まだ自分には余裕があるらしい。
ゆるりと舌を絡められて、甘く吸い上げられる。
大きな手のひらに素肌を撫でられ、そのままベッドに押し倒された。
ちょっと待ったとばかりに、俺はむき出しの肩先に口づける真行寺の頭をぐいっと押し上げた。
「真行寺」
「何ですかー」
すでに余裕のなさそうな真行寺は、いきなり遮られて恨めしそうに俺を見る。
「お前、やけにキスが上手くなってないか?」
「はい?」
どう反応していいのか分からない様子の真行寺の唇を指でなぞる。
「まさかどこかで練習してきたなんてことはないだろうな?」
「あ、あるわけないっすよ」
勘弁してください、と真行寺がうなだれる。
くすりと笑ってその頬を摘んだ。
「分かってると思ってるが、浮気なんてしてみろ、即別れるからな」
「えー!!だから浮気なんてしてませんって!」
そんなことは百も承知だが、子供っぽく唇を尖らせる様子がおかしくて、つい苛めてみたくなる。
「じゃあアラタさんだって浮気しないでくださいよ?」
「しないよ」
言うと、真行寺はやけに嬉しそうに笑った。
「何だよ」
「だって即答だったから」
しまったと思ったがもう遅い。真行寺は包み込むように俺の身体を抱きしめると、
「俺のキスが上手くなったんだとしたら、それはアラタさんのおかげですし、俺は浮気なんてしませんよ。アラタさん一筋ですから」
と耳元で囁いた。
物好きだなと苦笑しながらも、そっと真行寺の背に手を回した。




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あとがき

真行寺、いろいろ上手そうだよね。勉強熱心ぽいし。