「オレ、託生に髪が薄くなった時のことを心配された」 「は?」 いきなりの相棒の言葉に、思わず間抜けた声を上げてしまった。 「髪って?」 「将来ハゲるかどうかってさ」 言って、美貌の相棒はわしゃわしゃと髪をかき混ぜた。 薄いブラウン・・というよりは金茶に近いような髪は、どう見ても十分な量があってハゲるという状況からは程遠いように思えるのだが。 「章三、お前んちのジイさんてハゲてるか?」 「うちは・・・あー、母方はそうだな、薄かったな」 「隔世らしいぞ、ということは章三も将来危ないな」 ニヤニヤと笑うギイをひと睨みする。 「そういうギイは?ジイさんはハゲてるのか?」 「いや、うちは案外大丈夫だな。けど、託生が言うには猫っ毛っていうのも危ないらしい。オレ、将来スキンヘッド確定なのかな」 「スキンヘッドのギイねぇ、ま、ちょっと見てみたい気もするが」 「渋くていいと思うんだけどな、託生は何か微妙そうだったけど」 「ていうかな、お前、ハゲる歳になるまで葉山と一緒にいるつもりなのか?!」 「当たり前だろ。何でハゲるまでしかだめなんだよ」 「ハゲはどうでもいい!」 「ハゲっていうのは差別用語だな、髪が寂しい人とかさ、そういう呼び方の方がいいんじゃないか?」 「そっちの方が物悲しいわ!」 何が悲しくて麗らかな午後の一時をこんな話題で過ごさなくてはならないのか。 次に葉山にあったら説教してやる、と僕は心に決めた。 |