「赤池くんがゲームするなんて意外だったなぁ」 葉山がおっとりとした口調で手にしたソフトを眺める。 秋休み、ギイと葉山は2人して家に遊びにきた。久々に対戦するかとギイが言い出したので、引っ張り出したゲーム機をセットする。 「まぁ、葉山はしなさそうだよなぁ」 「うーん、そうだね。でもギイもしなさそうなのに」 「オレ?けっこうやり込む方だぜ。去年も章三とさんざん戦ったよなぁ」 嬉々としてギイがコントローラーを手にする。 去年2人でそりゃもう徹夜をする勢いでやり込んだ格闘系ゲーム。 さてやるぞーと意気込むギイと数回戦う。その様子を面白そうに見ていた葉山に、「やるか?」と聞いてみた。葉山は少し考えたあと、やると言った。 いきなりギイと対戦というのは無謀かと思ったが、まぁギイも適当に手を抜いてやるだろうと思っていた。 コントローラーのボタンの説明をして、少しばかり練習をしたあと、ギイと葉山の一騎打ちとなる。 「負けても泣くなよ、託生」 「子供じゃないんだから、泣かないよ」 拗ねたように言う葉山だったが、実際泣いたのはギイの方だった。 「お前、何でそんなに強いんだ?」 とうとうギイがやさぐれて、僕へとコントローラーを放り投げた。 初めてとは思えないほど、葉山は次から次へと技を繰り出し、ギイをKOした。 何度やってもギイは勝てない。 思いもしない展開に、ギイも僕も唖然とした。 「あれだな、葉山は楽器やってるから指が動くからじゃないか?ボタン押すスピードが半端なく早かったぞ」 「くー、託生に負けるとは、不覚だ」 「失礼だな、ギイ」 思いもしない葉山の特技がまた一つ発見された夜だった。 |