ここのところずっと、ギイは深夜の通販にはまっていて、まるで子供みたいにあれやこれやと欲しがった。 その都度ぼくは必死で彼を押しとどめ、そのおかげで、わけの分からないグッズが家に届くことはなかったのだけれど、ある夜、ベッドの上に荷物が置いてあることに気づいた。 「何だろう、これ」 何となく嫌な予感がしたけれど、ぼくはその包みを開いた。 「・・・・Tシャツ?」 それはごくごく普通のTシャツだった。黒と白が一枚づつ。 ギイのことだからぼくに内緒で通販でとんでもないものを買ったと思ったのに。 「ペアルックってことなのかな?」 「お、託生。それいいだろ」 ギイが満面の笑みで寝室に入ってきた。 「お前、どっちがいい?好きな方選んでいいぞ」 「色違いのペアルック?ずいぶんシンプルだね」 「オレ、黒にしようかなー」 「いいよ、どっちでも」 「じゃ、託生は白なー」 ギイが黒のTシャツを手にする。その時、ぼくの視界に何だかとんでもないものが過ぎった気がして慌ててギイが手にしたTシャツを掴んだ。 「ちょっと待った!!」 「うん?」 ぼくは奪い取ったTシャツの背中に書かれた文字に思わず絶句した。 I'm His 何だ、これは????もしかして白い方は・・・ He's Mine ありえない。こんなTシャツ着られるはずがない!! 「・・・・・ギイっ!!!!!」 「いいだろー。この前通販で見つけてさ、これは絶対買わなければってさ」 「嘘だろ??何の罰ゲームなのさ!」 「まぁまぁ、パジャマ代わりならいいだろ?誰も見ない。オレと託生だけ」 「・・・・ギイ、お願いだから、もう通販番組は見ないって約束して。じゃないとこれは着ない」 ぼくが強固に言うと、渋々ギイは約束してくれた。 嬉々としてふざけたTシャツを着るギイが、世界的大企業のFグループの時期社長だなんて誰が信じるだろうか。 オレは彼のもの 彼はぼくのもの ああ、本当にいったいこれは何の罰ゲームなんだろう。 とは言え、このTシャツはパジャマ代わりとなったので、恥ずかしいには違いなかったけれど、誰にも見られることはなかった。 しかし、である。 慣れというのは恐ろしいもので、ある時、日本から遊びに来た章三が泊まることになった時もいつもの癖で、ぼくたちはこのTシャツを着てしまった。 もちろん章三は呆れ返り、ぼくたちは正座させられて、懇々と説教をされてしまった。 曰く、いい歳をして恥ずかしい真似をするな、というものだ。 ごもっともなご意見だったので、ぼくはうなだれるしかなかったのだが、ギイはどこ吹く風で章三が泊まっている間もずっとTシャツを着続けた。 |