髭を伸ばすと宣言したギイは、その宣言通り髭を伸ばし始めた。 3日もすればさすがに見た目にも分かるほどになってきて、何だかちょっと別人みたいになってきた。 「案外伸びないものだなぁ」 ギイが鏡を見ながら頬を撫でる。 「ま、もうちょっと様子見てみるか」 「ギイ、どうしていきなり髭なんだい?」 不思議に思って尋ねてみると、ギイはんー?とのんびりと振り返った。 「いや、最近流行りなんだって、髭伸ばすの。で、ちょっとやってみるかと思ってさ」 「何だよ、それ」 よく分からない理由だなぁと思わず苦笑した。 「託生、オレ、カッコいい?」 背中から抱きついてきたギイが耳元で囁く。 「ギイはいつでもカッコいいよ」 「・・・お前、ぜんぜん気持ちがこもってない」 拗ねるギイに、ぼくはしょうがないなぁと笑って、ギイを正面から見上げた。 無精髭の生えた頬に手を添えると、ざらりとした感触が伝わる。 「無精髭生やして、ますますカッコよくなって、ぼくはきっともっとギイのことが好きになるんだろうなぁ、そんなに夢中にさせて、ギイはいったいぼくをどうしたいんだろうね?」 「・・・・」 「ギイは何してもカッコいいよ」 背伸びして無精髭の生えた頬にキスすると、ギイは何だか嬉しそうに笑った。 「でも仙人みたいになるまでは伸ばさないでくれよね」 「了解しました」 そう言って、ギイはぼくの頬にお返しのキスをしてくれた。 |