美味しいものを食べるには



「こういうの、何て言うんだっけ?」
うーんと考えるように託生が宙を見つめる。
「働かざる者食うべからず」
「ああ、それ、ぴったりだね」
納得納得、と託生が笑う。
一方のギイはどこまでも渋い顔で、包みあがった餃子を皿に並べていた。
久しぶりに章三の美味い手料理をご馳走になろうぜ、と鼻息荒く章三宅を襲撃したギイと託生だったが、待っていたのはあとは包まれるばかりとなった餃子のタネだった。
まさか僕だけに包ませるわけじゃないよな、と凄まれては嫌とは言えず、二人は生まれて初めて餃子の皮と格闘をしているのだった。
「託生、ヒダつくるの上手いな」
「ギイの、ぜんぜんヒダがない」
「どうせ腹に入れたら同じだろ」
「そうかなぁ」
「二人ともちゃんと包んでるか?」
章三がどれどれと手元を覗き込む。
「お、けっこうちゃんと包めてるじゃないか」
「章三、これいったいいくつ包めばいいんだ?」
ギイがもう飽きたとばかりに唇を尖らせる。
「自分で食べる分は自分で包む」
「はぁっ!?50個近く包むのか?」
「ええっ、ギイ、50個も食べるつもりなの?」
託生がぎょっとしたように目を丸くする。
「だって餃子パーティーだろ?それしかないんだぞ?50個くらい普通に食うだろ?なぁ章三」
「そうだな、まぁそれくらいは食うかな」
「えー、まだ20個しか包めてない。20個でいいかなー」
包む手間と食欲を比べた託生は、まぁこれくらいでいいかなーと思ったのだが。
「託生、章三の作る餃子はきっと絶品だぞー。絶対に食べ始めたら20個じゃ我慢できなくなる。あとで欲しいって思っても分けてやらないからな」
「えー」
結局ギイに言われるがままに頑張って50個の餃子を包んだ託生だったが、いざ食べ始めると、なるほど50個包んでよかったと納得した。
章三の餃子は絶品という話。



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あとがき

餃子だけなら、男子はやっぱり50個くらい食べるのかな。ギイはもっと食べそう〜