世界が終わる日 1



「明日でこの世界が終わるとしたら、お前どうする?」
「何それ」
「学生アンケート。こんなの聞いてどうするんだろうな」
オレはとんとん、とペン先でメモをつつく。
以前も学生の意識調査とかでこんなことやらされたなぁ。
託生はくるりと椅子を回転させて、オレに向き合った。
「明日で世界が終わっちゃうんだ」
「そういうこと。で、お前どうする?」
「どうって・・・何もできないよね。逃げるわけにもいかないし」
「まぁな」
「じゃ何もしない、かなぁ」
「そうだけどさ、そうじゃなくて」
オレはちょっともどかしくなってきた。
分からない様子の託生に、オレはあーあ、と言って、ペンを放り投げた。
「あのさ、世界が終わる日だぞ」
「うん」
「お前、一人で何もしないって、そりゃないだろ」
「・・・・・誰が一人でって言った?」
「え?」
「ギイも一緒にいてくれるんだろ?」
「・・・・」
「だって、世界が終わる日なんだよね?ぼくを一人にするつもりなの?」
ああ、そっか。
託生の中では、オレはもういつも一緒にいる存在なんだな。
特別なことじゃないから、あえて言う必要もないんだと思うと、じわじわと幸福感が溢れてきた。
「オレも託生と一緒に何もしないに一票」
「うん」
「最後まで一緒な」
「うん」
託生は当たり前のことのようにうなづいて、小さく笑った。




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あとがき

託生くん、無意識のギイ殺し。恐るべし。