お正月。 予約をした高級旅館は料理も温泉もそりゃもう素晴らしいもので、オレと託生は思う存分堪能した。 「もう寝る」 日本酒をしこたま飲んだ託生は、ふかふかの布団に潜り込むと、すぐに眠ってしまった。 まぁいいんだけどな。休暇だし。 まだ眠くなりそうにないオレは薄暗い部屋で、たいして面白くもない正月番組を見るともなく眺めていた。 「うー」 横で託生が低くうなって、いきなりばさっと布団を蹴り飛ばした。 アルコールが入って暑いせいだろう。 「おい、風邪引く・・・ぞ・・」 布団をかけてやろうと振り返ったオレはそのまま固まってしまった。 浴衣が肌蹴きって、帯だけになってるような状態だったからだ。 「お前な・・・」 何だその誘ってるのか萎えさせるつもりか分からない姿は。 そろりと近づいて、浴衣の前を引っ張ってやる。 「んー、やだ・・・」 「やだじゃないだろ。お前、オレ以外のヤツと浴衣で旅館に泊まるの禁止」 「何で?」 ふにゃふにゃの様子で託生がオレの手を振り払おうとするが、力なんて入ってない。 「欲情されたら困るから」 「・・・・よくじょう・・・」 ふうん、と言って、託生はまたこてんと眠りに落ちた。 結局のその夜、託生の浴衣を直すことばかりしていて、オレはほとんど眠ることができなかった。 翌朝、すっきりした顔つきの託生が、起きられないオレを揺すった。 「ギイ、お風呂行くんだろ?」 「うー」 「昨夜、浴場がどうとか言ってなかった?」 言ってません。 相変わらずの託生のボケっぷりに怒る気力もないオレ。 とりあえず新年はそんな感じで始まった。 |