お正月(2015年) 4



泊まっている旅館の近くの神社に初詣に行って、今年初めての運試しのおみくじを引いてみた。
引きのいいギイは当然というべきか大吉で、ぼくは中吉だった。
「大吉ってさ、あとはもう悪くなる一方っていうから微妙だよな」
「でもやっぱりどうせなら大吉がいいよ」
「託生の中吉は?何て書いてあったんだ?」
ギイがぼくの手元を覗き込む。
「なになに・・、今までの努力が実る、引越しよし・・・託生、やっぱり今年新しい家買うか?」
「何馬鹿なこと言ってんだよ」
「そろそろ一緒に住んでもいいと思うんだけどな・・・、んー、待ち人来る、相手を信じてよし。って、どこから待ち人が来るっていうんだ。もう来てるって言うんだ」
ぶつぶつとギイが文句を言う。
ぼくはギイの手からおみくじを奪い取ると、綺麗に折りたたんで境内にあるおみくじを結ぶ場所へと向かった。
「なぁ託生、相手を信じてよし、引越しよし、だぞー」
「そうだね」
「そろそろお嫁に来てくれませんかね」
「NYに?」
「だから日本で家買ってもいいんだけどさ」
どこまで本気なんだか。
ぼくはおみくじを括りつけると、どこか拗ねたような表情をしているギイに笑った。
「ちゃんと考えてるからさ、もうちょっと待ってよ、ギイ」
「今年中には答えが出る?」
「そうだね・・・うん、考えるよ」
一緒に暮らそうと言うギイと、まだ踏ん切りがつかないぼく。
やっぱりNYは遠く感じて、おまけに今でも十分幸せだから躊躇ってしまう。
「まぁいいか。とりあえず宿に戻ってコタツに入って、日本酒でも飲むか」
「昼間っから?」
「お正月ですし」
「まぁね。じゃあ露店でタコヤキ買って行こう」
「お、いいな、それ」
ほらね、こんな風にギイといるとやっぱり幸せだから。
人混みの中、気づかれないようにギイの手を握ると、ギイはきゅっとその手を握り返してくれた。




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あとがき

今年のおみくじは中吉でした。