泊まっている旅館の近くの神社に初詣に行って、今年初めての運試しのおみくじを引いてみた。 引きのいいギイは当然というべきか大吉で、ぼくは中吉だった。 「大吉ってさ、あとはもう悪くなる一方っていうから微妙だよな」 「でもやっぱりどうせなら大吉がいいよ」 「託生の中吉は?何て書いてあったんだ?」 ギイがぼくの手元を覗き込む。 「なになに・・、今までの努力が実る、引越しよし・・・託生、やっぱり今年新しい家買うか?」 「何馬鹿なこと言ってんだよ」 「そろそろ一緒に住んでもいいと思うんだけどな・・・、んー、待ち人来る、相手を信じてよし。って、どこから待ち人が来るっていうんだ。もう来てるって言うんだ」 ぶつぶつとギイが文句を言う。 ぼくはギイの手からおみくじを奪い取ると、綺麗に折りたたんで境内にあるおみくじを結ぶ場所へと向かった。 「なぁ託生、相手を信じてよし、引越しよし、だぞー」 「そうだね」 「そろそろお嫁に来てくれませんかね」 「NYに?」 「だから日本で家買ってもいいんだけどさ」 どこまで本気なんだか。 ぼくはおみくじを括りつけると、どこか拗ねたような表情をしているギイに笑った。 「ちゃんと考えてるからさ、もうちょっと待ってよ、ギイ」 「今年中には答えが出る?」 「そうだね・・・うん、考えるよ」 一緒に暮らそうと言うギイと、まだ踏ん切りがつかないぼく。 やっぱりNYは遠く感じて、おまけに今でも十分幸せだから躊躇ってしまう。 「まぁいいか。とりあえず宿に戻ってコタツに入って、日本酒でも飲むか」 「昼間っから?」 「お正月ですし」 「まぁね。じゃあ露店でタコヤキ買って行こう」 「お、いいな、それ」 ほらね、こんな風にギイといるとやっぱり幸せだから。 人混みの中、気づかれないようにギイの手を握ると、ギイはきゅっとその手を握り返してくれた。 |