神社へ初詣に行って、帰ってからはコタツでまったりと日本酒などを口にして、そりゃもう極楽なお正月に、ぼくは大満足をしていた。 なので、すっかり忘れていたのだ。 夜になって、仲居さんが布団を敷いてくれると、ヒメハジメヒメハジメ・・・とやたらと嬉しそうにギイが言い出した。 「ヒメハジメ・・・・」 忘れてた。 「夜ならいいって言ったよな、託生くん」 いや、いいと言ったつもりはないんだけど、でもまぁ二泊三日の温泉旅館の旅。 大好きな恋人と一緒にいて、何もしないというのは・・ないよね。 どさっと布団の上に押し倒されて、ぼくは半ば諦めて真上のギイを見つめた。 「なぁ託生」 「なに?」 「さっき、すごく楽しいサイトを見つけたんだ」 嫌な予感がする。ぼくの中の危険センサーがすぐさま反応した。 「これこれ」 ギイが取り出したタブレット。渋々覗き込むと、そこには診断メーカーの文字。 「なに、これ」 「ここにさ、オレとお前の名前を入れてみたんだよ」 「うん」 「そしたら、おすすめのヒメハジメ体位は『立ち松葉』です。ってさ」 「・・・・・」 「・・・・・」 「それ、なに?」 体位ってあれだよね。あの時の、えっと、体位だよね?? それは分かるよ、ぼくだって。 だけど『立ち松葉』ってなに?さっぱり分からずに黙り込むぼくに、ギイがふむふむとうなづく。 「オレもどんな体位なんだろなって思って、調べてみたらさ・・・」 ギイってば、さっきからこそこそと何かやってると思ったらこんなことしてたのか。 暇だなぁ。 「ほら、これな。立ち松葉」 「・・・・・は?」 何だこりゃ!!!! いきなりのあからさまなイラストにぼくは真っ赤になってしまった。 「すごいよなー、こんなことできるのかな?」 「し、知らないよっ!!!ていうか、無理無理無理。絶対無理!!!!できるわけないだろっ!!!ギイのばかっ!絶対やだっ」 ぼくは布団の中に潜り込んで、頭から上掛けを被った。 「おーい、タクミくーん」 「・・・・・」 「冗談だって。こんなのできるわけないだろ」 「・・・・・」 「託生ってば・・」 ぼくはがばっと布団から顔を出して、ギイを睨んだ。 「しないからねっ!!!」 「わかったよ」 「ヒメハジメも今日はなしっ!!!」 「何でだよっ!!!」 慌てるギイを無視してぼくは再び布団の中に入った。 立ち松葉はできなくても、絶対他のヤツを試したいとか言い出すに決まってる。 伊達に何年も付き合ってるわけじゃないのである。 |