嫌だ嫌だとヒメハジメをごねていたら、珍しくギイが切れた。 「じゃあどんなだったらいいんだよ?せっかくいい旅館に泊まって久しぶりに二人きりでいるっていうのに、何もしないなんてあり得ないだろ」 「そうだけど」 「だいたいお前だってやり始めたら嫌じゃないくせに」 「何か言った?」 ぼくが睨むと、ギイは「別にー」と言ってふいっとそっぽを向いた。 子供かよっ!!まったくもー。 ぼくにしてみればせっかくいい旅館に泊まってるんだから、温泉を堪能するとか、美味しい料理を味わうとかをしたいのだ。 だいたいアレは別に高級老舗旅館でなくたってできるじゃないか。 とは言うものの、ギイに理不尽な怒りをぶつけられたままでは、ぼくだって腹が立つ。 ぼくはおおむろにギイのタブレットを手に取ると、さっきまでギイが見ていた怪しげなサイトを表示させた。 次々に48つのイラストをクリックし続け、現われたページをギイへ差し出した。 「これ」 「うん?」 「これならしてもいい」 それはとても人間技とは思えないような体位で、おまけにどう考えてもギイの方が大変なものだ。 こんなことしても気持ちいいとは思えない。 ギイはじーっとそれを見ていたが、やがてうーっと低く唸った。 「よし、試してみる」 「ええっ!冗談だろ!?」 「何だよ、託生がしたいって言ったんだろ」 「まさか本気でやるって言うなんて思わないだろ」 「あ、お前最初からするつもりなかったんだな」 ばれたか。 ギイはますます不機嫌になって子供みたいに唇を尖らせた。 そんなギイを見ていたら何だか笑えてきてしまった。 世間からは若き敏腕実業家などと言われているギイなのに、怪しげなサイト見て、あーだこーだとぼくに文句を言うのだから。 「しょうがないなぁ、もう」 ぼくはギイに近づくと、膝立ちになって彼の頬を両手で包み込んだ。 そのままそっと口づけて、しばらくその甘さに酔った。 「・・・正月早々、喧嘩するのはやめよ?」 「そうだな」 ギイがぼくの背中に腕を回して引き寄せる。 「別にしたくないわけじゃないんだよ?」 「わかってるよ」 「ただちょっと、体固いしさ、ああいうのは無理だなーって思うんだよ」 「そんな理由かよっ」 今度はギイが笑い出す。 「だからさ、普通のだったらしてもいい」 ぼくが言うと、ギイは何か言いたそうに悪戯っぽくぼくを見つめた。 しょうがないので、ぼくは視線を外して小さく言った。 「えーっと、したい、です」 「よろしい」 ギイが満足そうに笑って、ぎゅっとぼくを抱きしめた。 そんなこんなでヒメハジメ終了。 |