「8月21日は献血の日だって知ってたか、章三?」 「知ってたかも何も、だからこうしてみんなで献血をしようってことになったんだろ?」 街中で目にとまった献血車の看板の「本日献血の日」という文字を見て、ここは一つ、元気な高校生の血を寄付しようではないかということになった。 「しかし、どうして8月21日が献血の日なんだろうな?」 「そりゃ何か理由はあるんだろうが、語呂合わせするならハニイだよな」 ギイの言葉に、章三が露骨に眉をひそめた。 「蜂蜜の日か?お前、また瓶に指突っ込んだりするなよ。今度は助けないからな」 隣に二人のやり取りを聞いていた託生が思わず吹き出した。 先日、食い意地の張ったギイがハニィポットに指を突っ込んで抜けなくなり、それを章三が上手に抜いてくれたのだ。 「もうしないって。いや、章三、ハニィと言えば恋人のことだろ?だから今日は託生の日・・・いてっ、いきなり足を踏むな、章三!」 「鳥肌が立つようなことを言うからだっ」 「そうだよっ、日本じゃハニィだなんて言わないよっ」 ここは託生も章三の援護をする。 ハニィの日だからって、もしギイにハニィだなんて呼ばれたらと思うと寒くなる託生である。 「じゃあ託生、8月21日、ハニィの日じゃなきゃ何の日だよ」 「えーっと」 託生は少し考えたあと、 「はにわの日とか?」 何となく、ハニィの響きが埴輪っぽいなぁと思ったのだが、それを聞いたギイと章三は何とも微妙な顔をした。 「葉山、埴輪の日って何するんだ?埴輪を愛でるのか?え?」 「ハニィで埴輪?託生の感覚ってたまに分からないよな」 二人してそれは変だと首をひねる。 「何だよっ、蜂蜜の日とか恋人の日よりずっといいよ!埴輪の日!」 蜂蜜、恋人、埴輪で、献血待ちの間ずっとわーわー言っていた3人だが、8月21日、献血の日である。 |