「1年も同じ部屋で、どうして赤池くんはギイのこと好きにならなかったんだろう」 なんて阿呆なことをつぶやいた葉山の後頭部を叩いたのは条件反射というものだろう。 「痛いなー、何するんだよ、赤池くん!」 「お前こそ何を阿呆なことを言ってくれる!見ろ、鳥肌が立ったじゃないか!」 僕はずいっと葉山の目の前に腕を差し出した。 「だって、不思議だったんだよ」 「何がっ!お前、誰でもかれでもがギイのことを好きになると思ってるんじゃないだろうな」 「え、好きにならない人なんているのかな?」 きょとんとした葉山に、僕は思いっきり脱力した。 確かにギイは美男子だ。頭だっていいし、性格は・・多少難ありだが悪くない。 しかし、だ! 「普通、男は男を恋愛の対象としては好きにならない」 「そうだけど・・・」 「だけど?」 「だって、ギイだし」 「・・・・」 女房が思うほど旦那はモテない、なんて言葉、ギイに関しては当てはまらないような気もするが、だからといってこの葉山のとぼけた発想もあり得ない。 ギイにこのことを言えば、きっと心底幸せそうな満面の笑みを浮かべるんだろう。 「何だかなぁ」 「何だよ」 「いや、幸せでけっこうなことだと思ってさ」 僕の口調に諦めが滲んでいたのに気づいたか、葉山は少しばかり不満そうに唇を尖らせた。 |