限界




成人式を終えた真行寺から、早速一緒に飲みに行きましょうと連絡があった。
別に祠堂でだってこっそり飲んでただろうが、といったんは断ったものの、まぁある意味お祝いだし、たまにはいいかと思いなおした。
が、しかし。
飲酒解禁となった真行寺は一度限界まで飲んでみたいと言い出したのだ。
「お前、急性アルコール中毒になったも知らないぞ」
「そこまで無茶しませんって」
居酒屋でしこたま飲んで、そのあと、一人暮らしを始めた真行寺のアパートで飲みなおした。
まぁ男なら一度は限界を知りたいと思うものだし、家で飲んでる分には多少醜態を晒したところで俺しか見てないのだから問題はない。
と思っていたのだが。
「アラタさーん、まだ飲めますし、ちょ、っとグラス取り上げないでくらさいお〜」
「お前、もうベロベロだろ。終わりだ」
「ひどい。アラタさんの意地悪・・・」
「うるさい。ほら、もう寝ろ」
「やだ」
真行寺は俺に抱きつくと、そのままフローリングの床の上にばったりと倒れこんだ。
「真行寺っ!お前いい加減にしろよっ」
「あー。アラタさんの匂いだ〜」

(こいつ、酔いが覚めたら絶対シメる)

酔っ払い相手に何を言ったところで意味がないことがくらい俺だって分かってる。
大人しくしてれば勝手に寝るだろうとあえて抵抗せずにいると、何をトチ狂ったか、真行寺がごそごそとシャツの裾を引っ張り出し始めた。
体格差があるから圧し掛かられるとどうやっても逃げられるはずもない。
ある意味諦めて好きなようにさせていたが、結局途中で真行寺は睡魔に勝てずに動かなくなった。

(こいつ、別の意味で、明日シメる)

中途半端に煽られた俺は真行寺を蹴り飛ばすと、一人で真行寺のベッドで眠った。
もちろん次の朝、目覚めた真行寺のことはきっりちシメた。



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あとがき

しばらくはさせてもらえなかったはず。