「ねぇきみ、モデルとか興味ない?」 なんてスカウトを、目の前で見るのは初めてだった。 本当に街角でのスカウトなんてあるんだな、と三洲はある意味感心した。 いきなり見知らぬ男から声をかけられた真行寺はぎょっとしたように身を引いて、次の瞬間にはいやいやと手を振って歩き出す。 「きみ、高校生?身長高いね。本気でモデルどうかな?」 男はしつこく真行寺のあとをついてくる。 「本当に興味ないんで」 いくら真行寺が追い払おうとしても男はついてくる。 やれやれ、と少し離れた場所でその様子を見ていた三洲は、彼らに近づいた。 「真行寺」 後ろから声をかけて、するりとその腕に自分のそれを絡める。 ぎょっとしたのは真行寺だけではなく、男も同じだった。 「俺とのデートに遅れてくるとはいい度胸だな」 「え、いや、その・・」 「何だ、俺のことを好きだと言ったのは嘘だったのか?」 「滅相もないっす。世界で一番好きなのはアラタさんだけですから!」 不毛な会話を続ける2人に唖然としていた男は、見てはいけないものから目を逸らすようにしてそそくさとどこかへ消えてしまった。 それを確認して、三洲はぱっと真行寺から腕を離した。 「お前に隙があるから声なんかかけられるんだ」 「え、そんな不条理な」 「今度あんなヤツに声をかけられたらただじゃおかない」 「そんなご無体な!!」 どうして三洲が機嫌が悪くなったのかイマイチ理解できない真行寺はただひたすらごめんなさい、と謝るしかなかった。 |