章三くんの親友の崎さんと一緒に現れた葉山さんは、何ていうかすごく雰囲気のいい人だった。 崎さんも章三くんも、どちらかと言えば人の機微に聡くて、すぐにその場の空気が読めてしまうような鋭い部分があるんだけど、葉山さんはそんな2人とは真逆で、どこか天然ぽい言動がすごく可愛らしく感じた。同じ歳の男の人に対しての表現ではないとは分かっていても。 「葉山さんて、バイオリン弾くんでしょ?」 「え?うん、赤池くんに聞いたの?」 「章三くん、崎さんと葉山さんの話、いつも楽しそうにしてるから。葉山さんのバイオリンはすごく上手だって自慢げに話してるもの」 「赤池くん、そんなこと言ってるんだ」 戸惑ったような、けれど、ちょっと嬉しそうに葉山さんは微笑んだ。 たぶん、章三くんは葉山さんにいつもびしびしと辛辣なことを言っては困らせてるんだろう。 けれど、それは心を許してる証拠に他ならない。 崎さんとはまた違った意味で、葉山さんは章三くんの大切な友人なのだ。 「葉山さんてモテそうね」 「えっ????」 心底驚いたように葉山さんが目を見開き、それはないなぁと苦笑した。 「モテるんならギイがダントツだし、赤池くんもけっこうモテるし」 「ふうん、章三くん、モテるんだ?」 「えっ・・・っと・・あ、モテるんだけど、でも、別にだから何かあるってことじゃなくて、だって、赤池くん、奈美子ちゃんのこと好き、だし」 あたふたと言い募る葉山さんがおかしくて、思わず吹き出してしまった。 「ありがと。崎さんてモデルさんみたいだから、そりゃモテるわよねぇ、大変ね、葉山さんも」 「・・・・えっと・・・別にギイがモテて困ることは、ない・・んだけど・・」 どこか赤くなりながら否定するなんて、本当に嘘がつけない人なんだなぁと思う。 「そっか、大変なのは崎さんか」 「?」 少し付き合えば、葉山さんがすごく素敵な人だということが分かる。 ルックスから好きになるんじゃない女の子というのは案外たくさんいるものだ。崎さんもそれがよく分かっているからヤキモチ焼いたりするんだろうなぁ。 ルックスも中身もパーフェクトなのにヤキモチ焼きだなんて、ちょっと可愛いかも。 くすくすと笑う私を、葉山さんは不思議そうに眺めていた。 |