春になったら 3



ほんのりとした温もりに目が覚めた。
目の前に章三くんがいて、思わず声をあげそうになってしまった。

(び、びっくりした)

今までだって章三くんの寝顔は何度も見たことあるのに、まさかこんな間近で、それも同じ布団の中で見ることになるなんて・・・想像したことがない、と言えば嘘になるけど、でも本当にそうなった時に、こんなにドキドキするものだとは思っていなかった。
付き合い始めて初めての春休み、章三くんと2人で旅行に出かけた。
どこでもいいよという言葉に甘えて、ずっと訪れてみたかった京都へやってきた。
章三くんが予約してくれた宿はすごく素敵な風情のある旅館で、部屋でいただいた食事も美味しかった。
初めての一泊旅行で、私はずっとずっと緊張していたのだけれど、章三くんはと言えばぜんぜんいつもと一緒で、ちょっと拍子抜けしちゃうくらいだった。
むき出しになった章三くんの肩が視界に入って、急に昨夜のことが思い出されて顔が赤くなったのが分かった。

(うわー、恥ずかしい。章三くんが起きる前にちゃんと着替えてお化粧もしておこうかな。でも布団から抜け出したら、章三くん起きちゃうかしら)

やっぱり先に露天風呂にでも行って、心を落ち着けなくては・・・と決めた。
起こさないようにとそろそろと布団から抜け出そうとした気配に気づいて、章三くんは目を覚ましてしまった。
ばっちりと目があって、きゃーっと私は思い切り動揺してしまった。
「おはよう、奈美」
「お、お、おはよう・・・」
「んー、何時だ?」
「え、っと・・・6時かな」
「・・・まだ早い」
言うなり章三くんは私の手を掴んで、布団の中へと引き戻してしまった。
「しょ、章三くん?」
「なに?」
柔らかく包み込むように抱きしめられて、その温かさにほっとした。
優しくキスされたことも、そのあとのイロイロも。
あれは夢じゃなかったんだ。
「あのね、章三くん」
「うん?」
「大好きよ」
ずっとずっと、小さい頃から好きだった。こんな風に一緒にいられるなんて夢みたいでちょっと怖くなる。
章三くんはさらりと私の髪を撫でると、頬にキスをしてくれた。



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あとがき

章三のあれこれはちょっと想像できないけど、普通に上手そう。