最近、真行寺が調子に乗っていて困る。 まぁもとはといえば自分のせいなので仕方がないといえば仕方がないのだが。 「アラタさん、今度の日曜日、映画見に行きませんか?」 「行かない。お前、俺が受験生だってこと忘れてるだろ」 「忘れてないっすよ。だからたまには息抜きしましょうよ」 同室者のいない270号室。 真行寺はまるで自分の部屋のような図々しさで寛いでいて、この分だと消灯までいるつもりらしい。 俺は一つため息をつくと、くるりと椅子を回転させて真行寺へと向いた。 「あのな、真行寺」 「はい?」 「言っておくが、俺は今までと何かを変えるつもりはないからな」 確かに恋人だと認めたが、だからと言って何かを変えるつもりは毛頭ない。 真行寺はうーんと少し考える素振りを見せた。 「だけどアラタさん、アラタさんが卒業するまでもう半年もないンすよ?せっかく恋人だって認めてくれたんですから、ちょっとくらいそれらしいこともしたいっす」 「・・・・」 恋人らしいことって何なんだ? だいたい最初っから恋人同士になって初めてするようなことはしてきただろうが。 と言い返したくなったが、やめた。 「とにかく、お前と遊んでる暇はない。ごちゃごちゃ言うならこの部屋への出入り禁止にするぞ」 「えええーひどいっすよ。俺、大人しくしてるのに」 よよよ、と白々しく泣きまねを見せて、真行寺が俺のベッドに突っ伏す。 やれやれとため息をつき、俺はベッドの端に腰かけた。 「真行寺、そんなに必死になって思い出作りをする必要もないだろ?」 「・・・・」 「それとも何か、俺が卒業したら、お前は俺と別れるつもりなのか?」 「・・・っ」 半年しかない、と真行寺は言うけれど、そのあともずっと付き合っていくのならば、半年くらい我慢しろと言いたいところだ。 「えっと、ごめんなさい、です」 素直に謝り、でかい身体を小さくする真行寺がやけに可愛らしく見えておかしかった。 真行寺がじっと俺を見つめて唇を寄せてくる。 まぁこれくらいは許してやってもいいか、と素直に口づけを受ける。 こういうのも真行寺が言う恋人らしいことの一つなんだろう。 何も変わるつもりはないと言いながら、ちょっと真行寺に甘くなってしまってるかもしれない。 |