外灯のない夜というのはこんなに暗かったんだと、ぼくは改めて思った。 ギイに手を引いてもらわなければ、きっと怖くて一歩も歩けない。 「ギイ、まだ?」 「もうちょっと」 さっきからそればっかり聞いてるんだけどなぁ、とは口にせず、ゆっくりと歩き続ける。 怖いのに、だけどこの闇の中にギイがいると思うだけで、ぼくはとても勇気づけられる。 きゅっと握った手に力を入れると、ギイも同じように握り返してくれた。 何だか嬉しくて、知らず知らずに笑みがこぼれる。 「さ、託生、到着したぞ」 「よかった、もう限界だよ・・・」 やれやれと息を吐いて、ギイの隣に立つ。 しーっと指を立てて、ギイがぼくの肩を引き寄せた。 「ほら、託生。あっち見て」 「え?」 指差された方向に光っているのは無数の蛍。 小さな光がふわふわと宙を舞う。その美しさに釘付けになった。 「すごい」 「な?頑張って歩いてきた甲斐があっただろ?」 まるで夢の世界にいるような幻想的な光景に、ただただ見惚れるしかない。 「ギイって魔法使いだね」 「え?」 「ぼくの願いを叶えてくれる」 蛍見たことないなぁなんて、いったいいつ言ったかさえ覚えてないのに、ギイはちゃんと覚えてて、こうして連れてきてくれた。 ぼくの知らないところでギイはいつでもぼくのことを考えていてくれている。 そう思ったら涙が溢れてきた。 「なに、泣くほど感動した?」 ギイがぼくをからかう。 感動したのは蛍にじゃないけど、ぼくはそういうことにしておいた。 「ありがとう、ギイ」 「どういたしまして」 「大好きだよ、ギイ」 うん、とうなづいてギイが嬉しそうに笑う。 目の前を横切る蛍に視線を上げると、攫うようにしてギイがぼくにキスをした。 |