「なぁ知ってるか、託生」 「なに?」 ベッドに寝そべって雑誌をめくっていたギイが、ちょいちょいとぼくを呼ぶ。 ぼくはギイのベッドの端に座って、手元の雑誌を覗き込む。 「キスって1分間で6kcal消費するんだってさ。1時間だと360kcalってことだろ。めちゃくちゃ簡単なダイエットだよな」 ギイが感心しきりでページを指差すが、それは英語の雑誌だったので、ぼくにはまったく読めやしない。 「オレがダイエットしたくなったら手伝ってくれる?託生」 「ギイはぜんぜん太らないだろ。あんなに食べてるのに」 「何だよ、今の言い方、微妙に馬鹿にされてるような気がするぞ」 「そんなことないけど」 「オレも託生がダイエットしたくなったら協力するからさ」 「でも何だか微妙なダイエット方法だけどなぁ」 だいたいキスを1分でけっこうな時間だよね。 1時間もキスするのなんてどう考えても無理な話じゃないだろうか? 「ぼく、違う方法で協力するよ」 「やーだね」 言うが早いか、ギイがぼくを身体の下へと引きずり込んだ。 「ちょっと、ギイっ!」 「1分間、キスできるものか確かめてみようぜ」 「えーっ!」 結果。 確かにダイエットにはなる、と思う。 1分間のキスはやっぱり長くて、ぼくは途中で抵抗しまくった。だからたぶん、消費したカロリーは6キロ以上になったと思う。なので、一応効果のあるダイエット、と言えなくもないのである。 |