もしかして、人前で手を繋ぐなんてとんでもないと思っているのかしら? 必要以上にべたべたしたいわけじゃないんだけれど、でも付き合っているなら手を繋ぐくらいは普通だと思うんだけど。 章三くんはそうでもないのかな? 私の少し先を歩く章三くんの背中を見ていると、何だかすごく悔しくなってきた。 思わず足を止めると、それに気づいて章三くんが振り返る。 「どうした?」 「・・・」 私は無言のまま右手を差し出した。 まるで子供みたいなおねだりの仕方だと思ったけれど、言葉にするのは恥ずかしかった。 章三くんは私と私の右手を交互に見て、それが何を意味するのか分かったのか、一歩私に近づいた。 「言えばいいのに」 「言わなくても気づいてよ・・って、今、面倒臭いって思ったでしょ!」 「思ってないよ」 章三は苦笑して、するりと私の手を掴んだ。 「冷たい手だな」 そのまま繋いだ手は章三くんの上着のポケットに吸い込まれた。 「・・・・けっこう恥ずかしいな、これ。あとで手袋買ってやるよ」 「手、繋いでくれればいいけど」 「欲のないやつ」 笑って、だけどあとでちゃんと手袋をプレゼントしてくれた。 もちろんそれからはデートの時は手を繋いでくれるようにもなった。 こうして少しづつ私たちの距離は近づいていく。 |