膝枕


「やっぱり怖いなぁ」
「まだ言う?」
託生に膝枕をしてもらい、すっかりまな板の上の鯉となったギイが、うーんと低く唸る。
耳かきしてあげるよと託生に言われ、恋人っぽいじゃないかと喜んだギイだったが、ごろりと横になってからはたと気づいた。
託生が耳かき???
何だかとっても不安だ。
「ほら、じっとして」
「託生、頼むからそっとしてくれよ」
「はいはい、まったく往生際が悪いよなぁ」
「なぁ、お前今まで誰かの耳かきしたことあるのか?」
「ないよ」
やっぱり!!まぁ普通はないよな。
いや、となるとさらに怖いじゃないか。
「ギイ、ぼくのこと信用してないの?愛してるんだろ?」
「愛してるけどなぁ。向き不向きがあるというか何というか・・・」
しかし案外と託生は耳かきが上手で、途中で眠ってしまうくらいに気持ちよかった。
じゃあお返しにしてやるよ、というギイに、今度は託生が怯えて嫌がった。
「何だよ、オレのこと信用してないのかよ」
「だって、ギイ、大雑把そうだから、絶対やだ」
「まぁいいから、任せろ」
自信満々のギイだったが、託生の不安は的中で、何度も痛い目に合わされた。
「もう絶対にギイにはしてもらわない」
固い決意を告げる託生に、ギイはごめんごめんと笑った。
「じゃあ練習しとくからさ、またさせて?」
「練習って、誰でするつもりだよ」
「そうか、練習相手がいるよなー。でも託生以外を膝枕するつもりはないから、託生が練習相手だな」
「ええーー!やだよ」
「下手なままも嫌だろ?」
「そ、そうだけど、でも何か違う」
いいように言いくるめられた託生は、このあとも何度もギイに痛い目に合わされては、喧嘩になるのだった。



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あとがき

実は痛がる託生くんを見るのがちょっと楽しかったりするのかも。