「で、いったい義一くんはさっきから何を怒ってるんだい?」 「別に何も怒ってねぇよ」 「じゃ拗ねてるの?それとも落ち込んでるの?どっちでもいいけど、言いたいことがあるならさっさと言っちゃえば?」 ギイはむぅと唇を尖らせて、佐智を横目で見る。 鋭い幼馴染み相手に今さら何を誤魔化すこともできやしないのだ。 横になっていたベッドから、よっと勢いをつけて起き上がり、ソファに座る佐智へと向き合う。 「結局、この1年間で、あいつに近づくことができなかった。友達になるどころか、オレ、絶対に避けられてる」 「ああ、義一くんのステーションのきみ?同じクラスだったんだろ?どうして友達にさえなれなかったんだい?」 それが本意かどうかは別として、初対面の人間とだってコミュニケーションを取るのは得意にしているギイだというのに。 「・・・オレがなりたいのは友達じゃない」 「じゃいいじゃないか。友達になってから恋人になる方が難しい」 佐智の言葉に、ギイは目を見張る。 「恋人になりたいんだろ?」 「・・・・そうだな」 「友達になるのに告白は必要ないけど、恋人になるにはちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃなれないんだよ、義一くん」 「・・・・っ」 「告白してみたら?」 「・・・玉砕しそうだ」 「その時はしょうがないから慰めてあげるよ」 にっこりと辛辣なことを言う佐智に、ギイは舌打ちする。 けれど、なるほど、と思った。 この1年間、託生とニアミスはしてもそれ以上近づくことはできずにいた。 時間をかけてと思っていたけれど、ここまできたら、多少強引な手段も必要なのかもしれない。 時間は限られているのだ。 自由でいられる間に、どうしても託生に一番近い存在になりたい。 「告白、か」 「そうそう」 にっこりと佐智が笑う。 数日後には新学期が始まる。 決断の時は迫っていた。 |